人魚は死ぬために海を出る
大学生の人魚と同級生がルームシェアをしながら物語は進む。
人魚は本当に好きになった人と結ばれるとあわになって消えてしまう。それが人魚の死。
設定は不思議な現代世界で、人魚がどういう存在なのか詳しい説明があるわけではない。
絵本のような世界として描かれる。
絵柄はあっさりした絵で最初は控えめな印象だけど、物語が進むとそれぞれのキャラクターの内面がじょじょにあらわになっていき、この絵柄と合わさっていく。
絵柄に合わせたたんたんとした描写がいい演出になっている。
この作品が合うかどうかはキャラクターにかかっていて、キャラクターのつかみどころが難しいので、合わない人はとことん合わないかもしれない。
でも、まったく合わない人にこそ読んでみてほしい。合わないというのを実感できるのもこの作品の魅力な気がする。
キャラクターたちは悪人ではないけれど、毒っ気があって友達にはなれなさそう。
だからこそそれぞれの言動だったりやっていることを眺めているとやりたいことができない辛さが伝わってくる。
最初にお葬式のシーンから始まり回想を経てお葬式のシーンに戻る。
バラバラになった登場人物たちがお葬式でまた再開しなにを話すのか……。
そうやってラストへと進んでいく。
※ネタばれ
人魚のリリー
一緒に暮らす森山
森山はリリーに好意をもっていてリリーもそれを知っている。
そして森山ではリリーはあわにならない。それはリリーからの好意は愛ではないからなのか。
リリーは辛い孤独な海から抜け出して、陸に上がる。陸で誰かと愛し合ってあわになって死ぬためだ。
それを森山は止めることはできない。
森山は死なんか目指さずに自分と日常を続けることを望んでいるが、リリーはそれを止めることはない。
リリーはあわになって死ぬことを目指しそして消えていく。
取り残された森山がリリーとのなにげない日常を想像して物語は終わっていく。
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