風速1メートルにつき1メートルのテレポート
地味目な主人公の君村。彼は風速によってわずかにテレポートできる。
ただし距離は短く生活に役立つわけでもなにか活躍できるわけでもない。
クラスメイトからは能力を疑われているが本人もそのことを否定せずにいる。
クラスメイトの渡がバイトしているのにでくわして、彼女がまわりから思われているような不良ではないことを知るが、彼女はまわりの誤解に慣れてしまっていて噂を否定せずにいる。
そういうまわりの噂や印象を否定せずに、まわりの誤解になれてしまっているふたりのやりとりや、取り巻く環境がたんたんと描写されている。
この大げさでないやり取りで読者を引き込むうまさと、テレポートという突拍子もない設定がもつコミカルさがいい。
ネタばれ 向かい風に立ち向かう
ラストの見せ場は主人公が、いざこざを起こした酔っ払いが渡を人質にとって彼女を傷つけようしているところに立ち向かうシーン。
まわりのクラスメイトが渡の噂や境遇を「自業自得なんじゃないの」とささやきあっているのを聞いて主人公は走り出し渡のもとにテレポートする。
風が吹いていないのになぜか長い距離を飛べたので不思議に思うが、それはまわりからの誤解や偏見という逆風に立ち向かったからいつもより風が吹いていたという説明がされる。
そういう逆風という偏見や噂や誤解に立ち向かうというのをテレポートという能力で表しているのがとてもいいシーンに思った。
キャラクターのデザインも控えめな感じで現実感を保っているように感じる。
そこに逆風にさらされているという寂しや不安や強がりが描かれていて、世界観や設定のバランスがよくできている。
物語の終わり方も余韻があり心地いいので、「しっかりした漫画が読みたい!」という人はぜひ読んでみてほしい。
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